utopiapartment

about something too important to be taken seriously

ロンドンへ出発…のはずが!

あまりに前から計画していたせいで、ロンドン旅行の日が近づく頃にはもうロンドンのことをほとんど忘れそうになっていた。忘れやすい性格なのである。前日になってそういえばと思いながらのんびり準備していたら、一緒に行くはずの夫からまさかの情報が入った。
「パスポートがない」。
夫はちょうど来月インド出張が入っていて、インドに行くにはビザが必要なので領事館に申請していたのだけど、インドタイムかつイタリアタイムで進む手続きがサクサク行くわけもなく、提出したパスポートが返ってこないままロンドンへ出発する日を迎えてしまっていたのだ。たいへんだ気づかなかった。パスポートがなければどう頑張っても飛行機には乗れない。こまった。

オペラもミュージカルもがっちり席を予約してしまってるしキャンセルも変更も不可。さいわい到着予定日には予定を入れていなかったので翌日の夜までに着けばなんとかなるけど、飛行機は格安チケットだったので変更手数料が元の航空券の倍…!なにより一日でパスポートが手に入るのだろうか。会社からいったん申請を取り下げてパスポートを返してもらえるか問い合わせをしてもらったら、なんと夫のビザは翌日出来るという情報が得られた。ほんとうに?海外生活も長くなってくると容易に情報が鵜呑みにできない。とくにビザや許可証関係には絶対がないので要注意である。
夫の話では名前を確認もせずに「ミラノからインドへのビザを申請する日本人は1人しかいない!だからこの出来上がるビザはお前のだ!」と自信たっぷりに会話を打ち切られたらしい。とにかく明日朝もう一度領事館に電話してからミラノへ行って、もしうまくパスポートがもらえればそのままミラノから飛行機に乗る、と夫は言う。(トリノは小都市なのでミラノまで出て行かないと外国の領事館がない)
で、とりあえずわたしだけ予定通り先にロンドンへ出発することになった。


しかし。
この旅行、インドビザの件から雲行きが怪しかったのだけれどこのあとどんどんトラブルがかさなってゆくのだった。
まず出発の日、空港についたらチェックインカウンターに人がいない。仕方なく直接荷物検査に並んで係員に交渉したけどまあ通らせてはもらえなかった。ていうか、並んでるあいだに電光掲示板見て気づいたけどわたしの乗る便1時間以上も早まっててすでにチェックイン閉まってるしあと20分で飛んじゃうじゃないかーーーーー!!!!!

一応チェックインカウンターに戻ってみたら今度は人がいたけれど、もうチェックインは閉まったからだめと冷たかった。まあそうだろうな…仕方なくチケットカウンターに行ったらそこにいた係りの人たちみんなに時間変更をやたら同情された。しかし調べてもらったらトリノからロンドンに飛ぶ便は残念ながらこれが今日最後の便……!!(まだ16時なのに…!)小都市の暮らしは厳しい。その場で翌日の便を調べたりしてもらってたんだけど、結局格安チケットだったので振り替えられないし、買い直すならイージージェットとか調べて飛ぼう…と思って家に帰ることにした。ひとつだけ朗報だったのは往復で買ったこのチケット、じつは往路と復路がバラ売りのもので復路だけでも飛べると係りの人が請け負ってくれた。観光学専攻なので航空チケットのプログラムも習ってたけど往路だけならともかく復路だけ使えるパターンがあるなんて知らなかった…!(普通は往路飛ばないと旅程全部キャンセルされる)

気を取り直して翌日。
わたしはイージージェットでミラノからの昼の便を取った。
今度こそは時間にたっぷり余裕持ってミラノの空港についたら、今度はまさかの乗る便1時間半遅れ。これがきのうなら予定通りで乗れたのに人生はままならない。しかも今日はオペラを予約してる日なので遅れはものすごく困る。困るのだけどどうしようも出来ない。飛行機が届かないとか、着いたけど機材を変更しますとか言ってどんどん追加情報で飛行機の遅れが加算されて行く。待つ。あせってもしょうがないしひたすら本読んで待つ。一冊終わった。

で、いざやっと飛行機が飛んでロンドンの空港についたのはオペラ開演2時間前だった。ロンドン市内までは1時間、そこからオペラハウスまで30分、開演30分前にチケット受け取りに行かないといけないので本気でギリギリだ。きのうから泊めてもらう予定だった人に到着時間の変更ばかりメールしてるけど、もう一通どうも必要そう。いったんアパートに寄って荷物置いて鍵もらう余裕もない。ホテルじゃなくて人の家に泊まるので到着時間が変わるのは申し訳ないがどうにもできない。ただでさえ夫は時間的に間に合わないので彼の分のチケット代は無駄になってるし。
「申し訳ないけれど予約したオペラに間に合わないので先にそっち行ってからお家に向かいます」オペラは休憩入れて大体3時間。そこから家に向かったらもう夜中になる。
わたしは心苦しく思いながらもスーツケースを引っぱって猛ダッシュでオペラハウスに走り、チケットを受け取り、かさばるスーツケースとかさばるダウンジャケットをクロークに渡してなんとか開演前にすべり込んだ。ギリギリ…!!が、よく考えたら焦っててオペラグラスがクロークに預けたスーツケースの中に入ったままだ。悲しい。せっかく持ってきたのに…(ド近眼だし、席後方サークルストールなのに…)


一方の夫はその日2時間かけて電車でミラノまで行き、ビザセンターに向かったら前日電話で用意できてると言われたはずのビザは用意されておらず、夫のパスポートもそこにはなかったという。そこでインド領事館のオフィスへスーツケースを引きずって直接移動して交渉したら、最終的には「じゃあ待っててくれるなら今ここでビザ作るから」と言われてビザ付きパスポートをゲットという奇跡的展開。で、夜の便で飛ぶことになった。到着は夜中になるけど旅行にはこれる。あきらめない力ってすごい。そしてインド面白すぎる。

はたしてオペラが終わって夜の12時少し前にわたしは中心から少し離れた住宅街になんとかたどり着き、夫は日付が変わって2時を過ぎたくらいに家に到着したのだった。
泊めてもらうおうちはリビングが広くプラズマテレビやアートが壁にかかっていてバスルームは大理石でベッドはふかふかという高級フラットだった。爆睡…