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宝塚月組「ベルサイユのばら オスカルとアンドレ編」★★★☆☆

宝塚の「ベルサイユのばら」初体験。

まず上がる前の幕がキラッキラで凄かった。ネオンちりばめた幕にキラキラの「ベルサイユのばら」文字。

そして幕が上がるなり全力で畳み掛けるキラキラの応酬。まずは物語とかじゃない。次々大勢出てきて歌い踊るレビューみたいなのからスタート。まるでもうフィナーレ。序盤から超全力!!キラキラの出し惜しみゼロ!すごい…こんな始めから盛り上げて大丈夫なの…?いや大丈夫なんだろうな…
宝塚すごい。

オスカルとアンドレが真ん中でポーズ決めてジャーンてなって幕が下り、ふつうに改めて物語スタート。平穏なオスカルとアンドレの子供時代のお話。ちょっとまださっきの衝撃から戻れなくて漫然と舞台を見るわたし。舞台では子供オスカルとアンドレが剣のお稽古で木の陰に入り、成長したオスカルとアンドレにスイッチして拍手が巻き起こる。
これが男役トップの龍真咲さんと、準トップ(というのが今だけ特別にあるのね?)の明日海りおさんかー始めて見たけど2人ともすごい美人。でもやっぱりトップと準トップのあいだには越えられない壁があるなあと思った。存在感ぜんぜんちがう。でも前に観た音月桂さんに比べるとそれでもさらに弱かった。圧倒されるほどのパワーがなくて、頑張ってるなあと思ってしまう。トップによってやっぱりだいぶ変わるなあ。

帰ってから参考のため音月桂さんの映像を観て、ああやっぱりぜんぜんちがうなと思った。
まず歌がきれい。しっかり安定して深い声が出てる。演技もダンスも不安感がない。だからこっちも歌に集中出来るし、演技に集中出来るし、うっとりできる。ベルばらの2人は結構セリフ間違えたり噛んだりしていたのでこっちまでハラハラしてしまって、がんばれ!って思ってしまった。宝塚だから仕方ないのかもしれないけど、芸術という位置でもしかしたら戦ってないのかもしれないけど、でもやっぱりこれだって舞台だ。しかも初日というわけでもない。東京の前に本拠地ですでにやって来てる演目だもの。舞台ならわたしは完成度のきちんとしたものが見たい。その辺りが物足りなかった。


でも舞台全体としての満足感はきちんとあって、まず舞台装置がすばらしいこと、衣装の本気度が半端ないことが、もうそれだけで観劇体験を成立させていると思った。これは客層が女性ばかり(そして年配の目が肥えてそうな方も多い)だからだろうなあ。舞台上で使われるルイスタイルの椅子だとかテーブル、オペラグラスでじっくり見てもわりといいものに見える。パリで腐るほど見てる目にもチープに見えない。すごい。作っているのか買ってきてるのか。どっちにしろすごい。

初めて全体を見たので比較対象がないのだけど、いままで映像で見たことあるものとセリフとか曲とか配置は一緒だったので基本の形があってそれを踏襲してるのかしら。昔からくり返し上演されているだけあってすごく構成がスマートでいいなあとも思った。

娘役トップの愛希れいかさんはロザリー役でしかもロザリーはジャルジェ家出たあとっていう、とくに必要ない脇役になっててかわいそうだったけど、かわいくて存在感あった。男役から最近転向したってあとから知って少しぎこちないと感じた部分には合点がいったのだけど、でも愛らしさがあるから舞台を重ねるたびによくなって行きそう!伸び代がある感じがする。トップ二人でカップルとして出てくるの別の作品で見てみたい。

トップ以外は正直大根で学芸会を観ている気持ちだったけど、最後までちゃんと気持ちを物語に添わせて舞台を追えた。この作品自体の力と宝塚の様式美だと思う。そしてここでしか見られない凄まじい量のキラキラをこれでもかこれでもかとガンガン湯水のごとく放出してきて、なんだかまるでフォワグラになったような気がするほど摂取させてもらって… 充足感に満ちあふれる。だってキラキラっていくら見ても見飽きないもんねえ。あるほどにうっとりするもの。夢の世界だなあ。美しい女性たちがキラキラにまみれて笑顔でひたすら歌い踊るって、竜宮城みたい。宝塚には宝塚にしか存在しない価値があるから、百年続くんだしこの先も続くだろうな。トップの2人が主役で別の作品も見てみたいし、これからも帰国したらまた宝塚見に来たい。