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ミュージカル「レミゼラブル」(ロンドン)★★★★★

レミゼラブル。
ロンドン旅行のしめくくりはこれ。
世界最長ロングラン記録の傑作ミュージカル。

チケット買ったのが半年以上前だったのでどんな席かわすれてたけど、行ったら前から3列目真ん中。
オペラグラス持ってきたけどいらなそうな近さ。ていうかほんとに近い。すごい近い…これは楽しみ!


じつはレミゼラブル、そんなに乗り気ではなく観にきた。
子どもの頃に原作を読んで、なんてひどい話だ!と強く思ったため、いかに人気と言われても今まで観る気になったことがなくロンドンも何度も来てるのに観てない。そもそもなぜみんなあんな救われない話をよろこんで観に行くんだ…と思っていた。

が。なにしろ映画が大ヒット。
ミュージカル映画大好きなので観たい。しかもイギリスのオーディション番組を観てすごく好きになったサマンサバークス起用!!いろんな人がレミゼラブルの話をしているのを見聞きし、しかも映画が舞台が上手く生かされているという話を聞き、これは映画を観たいけれどもその前に舞台を観なければなるまい、と思ってロンドンに来るついでについにチケットを予約した。
正直、短い滞在期間(正味2日)で一番の期待はチョコレート工場、二番目は内容はともかくフローレスが聴きたい「湖上の美人」で、レミゼラブルは完全にオマケだった。オマケだったのだけれど三つの中で一番最後に観たレミゼラブルに予想外にわたしは最初の二つの印象を吹っ飛ばされてしまった。


レミゼ…めちゃめちゃいい!!!!


NYに行ったときオフブロードウェイでやってたRENTを観たときも期待ゼロで行って、バーンと吹き飛ばされてしまった。
何度か噂は耳にし、パリのシェアメイトからもめちゃめちゃいいよとすすめられていたRENTはストーリーを聞いただけではぜんぜん心惹かれない複雑な話だし、見た目もハードだし、音楽もロック調みたいだし好みじゃない。熱烈なファンがいるという話は聞くけど自分には関係ないような気がしていた。
いやー思い込みっていけない。観たらもう関係ないとか好みじゃないとかそんな次元の話じゃなかった。魂のある人ならだれにでも、性別も、国籍も、なにもかも超えてストレートに届いてしまう人間賛歌。ミュージカルというか、RENTはRENTというものという感じがする。今まで見たあらゆるミュージカルの中でも、あれだけはちょっと別格だ。


人気があるものには絶対何か理由があるから、よく知らないうちから食わず嫌いするのはほんとうに損だ。
知ったつもりほどこわいことはこの世にないかもしれない。


レミゼラブルもそうだったー
人気の理由が観てしみじみわかった。これはほんとうに食わず嫌いだったなあ。子どもだったわたしにはただ悲惨で理不尽で正しくないと受け入れられなかったことも、大人になると、そもそも世の中そんなに正しくないし理不尽だし悲惨なことはあるのだとわかっているから、そこで引っかからない。それでもその上に立っている人々に共感と勇気を感じる。子どもの頃ただの悪役で嫌だったテナルディエ夫妻にも笑えるし、ああすばらしいなあって拍手を送れる。

休憩中、トイレで話してる人たちの会話を聞いてたら、今回のキャストは特別いい!今までずっと観続けてるけどわたしはこれが最高のキャストだと思う、と語るおばあちゃんたちが。そうなのか…!!
NYでライオンキング観たときにものっすごいキャストがぬるくて、あーロングランになって必ずお客が見込めるものはこうやってルーティン化しておもしろくない舞台になっていくのかしら…って思ったんだけど、そんなことはなかった。このレミゼ、キャストそろって全力で質も高い!曲も知ってる曲ばかりだし気分盛り上がる!なによりこの観客席の興奮…!
ライオンキングのときにも客席はものすごい盛り上がりで、なんなのこんな舞台にみんななに盛り上がってんの知ってる曲ならなんでもいいの?ってムカムカしてたけど、今回は!わたしも!全力で盛り上がりに参加できる!!!!もーものすっごおおおおおおく久しぶりに全力スタンディングオベーションした。いつぶりだろう?RENT以来かもしれない。


わたしは初見なのでおばあちゃんたちみたいに比べる対象がなかったけど、でもキャストすごくよかった。
確実にお客の入る演目でもこんなにいいキャストを揃えてこんなにパワフルなんてやっぱりロンドンのミュージカルはすごい。

わたしの観たキャストは以下の通り

ジャンバルジャン役ジェロニモラウシュは、スペイン語版レミゼラブルでジャンバルジャンをずっとやってきた人らしく。
体格たくましくて見栄えするし、もとがクラシック畑ということがわかる美発声。テノールだけど低音も深くていい声なところがたまらなくすてきだった。いろいろ聴いたけどわたしはこの人の声がいちばん好きだなあ、Alfie Boeもいいけど。

そしてジャベール役タムムトゥ。
オペラ座の怪人の続編ラブネバーダイズで怪人役をやってたらしい彼、彼の声もいいわあ!!
やっぱり低音が好きなのでこういう美低音たまらない。ステージプレゼンスもあって魅せる演技だった。

そしてそしてエポニーヌ役、ダニエルホープ。
前述のサマンサバークスとはまた別の、オズの魔法使いのドロシー役オーディション番組で最終的にドロシー役に選ばれた彼女。わたしはこっちの番組も観てて、そのときは別の子を応援していたし、この子は性格悪そうだなーと思ってたんだけど、やっぱり一定期間その生活と成長を追いつづけてた人には一抹の思い入れ(というかミーハー心というか)があるので、脳内でわああああああてなった。あと映像で観るよりステキ!!声もきれいだし可愛いしやっぱりヒロインオーラある。
エポニーヌ役としてはサマンサバークスの方がいいなって思うけど、ダニエルホープも歌も演技も上手かった。エポニーヌよりはもうちょっと優等生なヒロインの方が合ってると思うけど、先が楽しみ。思いがけず生で観られてうれしかったなーーーー

テナルディエ夫妻もめちゃめちゃ上手くて、カーテンコールでもものすごい歓声だった。いいところのひとつもない悪役をここまで魅力的に演じるってすごい!!
ジャベール役もそうだけど、悪役を演じるってお客さんもだけど演じる側も役を好きになるのも理解するのも難しいし、ただでさえも役の中に入りづらい。人に嫌がられることをし、人に嫌われるように振る舞うことって他の役にはないつらさと、たぶん面白みがある。だからこそあまりに見事に演じられると、もうなんかその洞察力の深さと心の強さの前にただただずーっと拍手したくなるなあ!魅力的な悪役って、すごいなあ。役者さんの力がすごいなあ。

あと!アンジョルラス役のクリストファーヤコブセンがほんとうにほんとうにものすごいハンサムだった…
ディズニーのポカホンタスに出てくるジョンスミスそっくり。なんかもう、ディズニーの王子様の具現化って感じ。しっかりした輪郭に整った眉、目、鼻、口、ものすごい完璧なバランス。彼だけをだいぶガン見してしまった。整いすぎてて。きれいすぎて。こんな、舞台に出るために生まれたような人がいい声まで持ってて、そして舞台に出ているってなんて世界はすばらしいの。しかもなんか名前までハンサム…!!

それとやっぱりなんといっても曲がいい!
どうしてミスサイゴン以降いい曲が出ていないんだろう。こんなにもすばらしいものを書く人たちが。レミゼラブルで燃え尽きちゃったのかしら。どの曲も迫力があって哀愁があって心に響いて、名曲ばっかりだった。何度でも何度でも聴きたくなるなあ。
One day moreはとくにすごく好きなひとつだけどこれはオリジナルの仏語版ではUn grand jourになってて、「あともう一日生き延びたい」というよりは「最後の審判が下る日、自分の行いが正しかったかはそのとききっとわかる」という内容だったと知って、少し複雑な気持ちになった。そういうとこのフランスの深さはやはりとてつもなく深い…

舞台を観たのでこれで心おきなく映画版も観られる。
だいぶ時間経ってしまったのでもうスクリーンで観るのは難しそうだけれど、そろそろiTunesに配信されるので見るのが楽しみ。でもやっぱり生の舞台であれだけのエネルギーを浴びてしまうと、また舞台に行かずにはいられなくなりそう。
こうしてレミゼラブルはリピーターを作るのねえ…