utopiapartment

about something too important to be taken seriously

ビゼー「カルメン」★★★☆☆


トリノ王立劇場(レッジョ)は街の中心カステロ広場に位置していて、
とても便利なところにある。夜、そこへオペラカルメンを観に行ってきた。

イタリアのオペラハウスで有名なのはなんといっても
ミラノのスカラ座だけれどそのスカラ座よりも早く18世紀にレッジョは建てられた。
例えばプッチーニのラボエームとか、有名なオペラもいくつかはここが初演。
さすが昔は繁栄していたトリノ。ほんと今はのんびり小さい街なのに歴史的…。

残念ながらイタリア最高のオペラハウスとも言われたらしい当時の建築は火事で全焼、
今の劇場は1970年代に再建されたもので当時の最先端デザインだったことを
感じさせる(いまのわたしには)レトロフューチャーな、UFO内部のような内装。
椅子がふかふかで客席が現代の劇場に近い配置で天井桟敷がなく字幕は舞台上部。
バーも広く、これまたふかふかの椅子がたくさん窓際に配置していてのんびりできる。
とても居心地のいい素敵な劇場で、わたしはスカラ座よりもずっとこっちが好き。

また、なんといっても他の都市とくらべてここのオペラハウスは観客がおしゃれ。
お年寄りから子どもまできっちり装ってくるので観客の服装を見るのが毎回楽しい。
今は冬だけれどかなり年配の人でもデコルテや背中がばーんと出たドレスを着ていたり、
質の良さそうなジュエリーやクラッチに、よく歩けるなあと感嘆するようなヒールで颯爽と歩いている。
ミラノのスカラ座もフォーマルだけれどここよりも観光客が多くくるのでカジュアルな人もたまに見る。
一方、トリノはほぼ皆無と言っていいレベル。
イタリアの保守的な面がここではすてきに反映されているなあと思う。

さて、表題のカルメン。
ビゼー作曲のフランスオペラ。舞台はスペイン。
美しく魅力的なジプシーの女性カルメンが働くタバコ工場で騒ぎを起こし、
軍に捕まるもののドンホセという軍曹を手玉に取って逃げ、
カルメンをわすれられなくなったドンホセに追いかけられ最終的に刺し殺される話。
ここにドンホセと同郷の婚約者や、カルメンのジプシー仲間たち、
カルメンの恋人で闘牛士のエスカミーリョが絡んでくる。

シーズンのプログラムが発表になったとき、今回カルメンで
日本人指揮者の佐渡裕さんが指揮するというのを見つけて観に行ってきた。
有名な曲盛りだくさんなカルメンで指揮棒を飛ばしてまで激しく指揮する佐渡裕さんの指揮
とあって期待して観に行った。結果的に音楽は少しやる気がない感じというか、
前奏から第一幕はイマイチだったのだが、第二幕あたりから取り戻して最後は良かった。
初めてここの正面パルコ席から観たのだけれど、やっぱり音の聴こえ方がいい!
前回のオペラはスカラ座で左側三番パルコというオケピ真上だったのでなおさら。

できればコンテンポラリーじゃない演出で観たかったけれどまあいいことにした。
ちょうど夫の誕生日と時期が重なっていたので誕生日の夜の回を予約。
ゲネプロで観てきたかのちゃんはAキャストのカルメン役がすごくよかったと言っていたので
観たかったのだけれど、たまたまBキャストの日だった。
でも、Bキャストのカルメン役も思ったよりずっとよかった!
他のキャストも特別うまい人もいなかったけれど聞くに耐えない人もいなくて
バランスのいいキャスティングだった。出演者のバランスってほんとうに大切だなあ。
特別素晴らしいというほどではないけれど十分に満足して劇場を後にし、よい夜だった。