utopiapartment

about something too important to be taken seriously

ミュージカル 「ウィズ オズの魔法使い」☆☆☆☆☆


宮本亜門演出「ウィズ オズの魔法使い」。
超ド級パワフルミュージカル、と銘打たれてるしけっこう期待していったんだけど、完全に外した。

主演はAKBのメンバーからオーディションで選ばれた増田有華、その他DA PUMPのISSA、森公美子、小柳ゆき、陣内孝則などなど…
よく考えたらミュージカル俳優じゃない人ばかりが売りだった。日本でミュージカルに人を集めるのが難しい中で、AKBの子を起用したり芸能人を使って普段こない客層を集める試みだったのかもしれないけど、餅は餅屋だよなあ!気づけ…わたし…

行ったのは千秋楽前日なのでもうかなり出来上がってこなれた頃のはずなのだけど、いろいろとバラバラだった。とても中途半端な仕上がり。今回がミュージカル初めてっていう観客が多いらしいけど、これがミュージカルだと思われたら悲しい。日本でももっとましな舞台ある。

オープニングのドロシーの叔母さん役の人の歌はすごくよかった。最初の歌が彼女だったので一瞬、これは期待できる作品かも!と思ったら、あとから出て来る人たちとはレベルが違っていた。この人だけは上手かったー

それとバックダンサーたち。すばらしかった!
エメラルドシティのダンスシーンはダンサーたちのみだったので迫力があったし、竜巻やイエローブリックロードやけしの花をダンサーたちを配置して踊りで表現しているのもきれい。日本のダンサーはほんとうに層が厚いなあ。しかしなまじダンサーの質が高くてダンスシーンが完成されてる分、キャストとのレベル差とセットの安易な簡素さは悪目立ちしていた。

主役はAKB内では飛び抜けて歌が上手くてでもあまり人気はないので埋れている子らしかったのでそういう才能が別の場で評価されるのはいいことだなと思っていたけれど、実際観たらたとえ歌唱力があるとしても、人前で歌って踊って演技をするにはトレーニングが足りないと感じた。AKBの子だから忙しかったのかもしれないけど、このレベルで出すのはかわいそう。
個人的にはそもそも声質がミュージカルに向いていないんじゃないかと思う。キンキンしすぎ。歌での低音はきれいなところもあったのでそれを活かして声質をカバーするトレーニングがされていたならまだ違ったんじゃないかと思った。舞台の発声が出来ないからがんばって大声を出そうとしてキンキンなってるんだと思う。
歌も高音部はかなり耳障りで歌に流れがなく音程が揺れる。セリフと歌をつなげる技術を持っていないのでぶちぶち切れるし、ダンスシーンの直後はセリフが息切れしていて、劇全体の流れを阻害していた。
セリフで「感情を込める」っていうことをただ「声のトーンを強めればいい」って思ってるみたいで、すべての感情表現がワンパターンなので物語の中でドロシーが変化していく様子が見て取れなかった。行動に意味が見出せず主役がリアルじゃないので、他のキャストも説得力を欠くという結果に。
歌と踊りと演技と、どれも完全に出来ないためにそれぞれに気が散ってすべて中途半端になってしまった印象。

ブリキ男の役の人の身体のさばきはきれいだった!ダンサーなのかな?歌もよかった。主要キャストではいちばん安定してた。でも強く印象には残ってない。それとライオン役の人はたぶんいちばん笑いをとってウケていた。んだけど、芸人さんなのかな?
ISSAは舞台とは別のフィールドを探すべき。
グリンダ役の小柳ゆき、歌はとてもよかったんだけど、役にはなってないからエンディングテーマを歌手小柳ゆきが出てきて歌ってるって感じだった。北のいい魔女の役の人はギャグも滑ってるし歌もひどいし部分的に声が耳障りだった。なぜあのままで修正してないのかわからない。
キャストの中でもウィズ役の陣内孝則はやっぱり演技はよかったんだけど、かなりセリフを噛んでいたので気になった。あとストーリーに関係ない長話が退屈で少し眠ってしまった。

全体的にギャグシーンはおもしろくなかった。
ラブ注入とかお笑いのネタを挟んでたりもあったけど、アドリブなのかなあ?蛇足で白けた。

ロンドンやNYで舞台に出てくる人たちとは練習内容も量もちがうのだろうけど、それにしてもミュージカルに出るならばもっとミュージカルのためのトレーニングをするべきだと思う。せめて発声をもっとやって聞ける声にしてほしい。キャストの声が弱いからかなんなのか音響が爆音でつらかった。今回とくに3階席から観たのもあってちょうど正面にスピーカーがあって、耳が壊れるかと思った。とくに北の魔女役と主役のドロシーはほんとうにきつい。
ミキサーのせいなのかなと思ったけど、後半に出てきた小柳ゆきの歌のときには高音部も大丈夫だったので、単純に発声の問題だと思う。お腹から出ないから声を喉で張ってるせいであんなキンキンしてるんじゃないかしら…

しかし、わたしは完全に価格に見合わない低レベルな学芸会を見せられたと思って腹を立てていたけれど、周りの観客は盛り上がっていたし、すすり泣く声も聞こえたのでわたしには見えない何かがあったのかもしれない。
主役の子のファンは埋れてたのにこんな大舞台で歌って踊ってて感無量かもしれないし、多少の難は関係ないのかも(そもそもどの程度のレベルか知ってそうだしなあ)

ぜんぜん盛り上がってないし一刻もはやく立ち去りたかったのだけど、席が真ん中だったので出られない中、ダンスシーン再現型アンコールが3回つづき、なんとも言えない気持ちで終わった。

毎回、つっこみたくて行ってる訳ではないし、事情がいろいろあるのはわかるし、大感動するような舞台はときどきしかないというのはわかるけれども、お金を取ってやるなら最低限保障されるべきレベルがあると思う。
そのレベルに達していない上に通常より高め設定のチケット価格だったのでもう、キイイイイて思いながら会場を出た。

日本でも歌舞伎の幕見席なんて1000円以下で観られるし宝塚だって3000円くらいからよね。なのにあれで最低価格7800円スタートはおかしすぎるし他の舞台への冒涜。
ちょびっと日本に帰る用事があったのでついでに楽しもうと思ってたけど腹を立てたのち脱力という結果に終わった。

クオリティが事前に想像つかないものは日本では地雷なんだな。勉強になりました…